50代半ばで雇い止めを言い渡されて、退職まで残り1か月となったころのことです。
急いで次の就職先を探していたわたしは、ハローワークへ通っていました。
そこで良さそうな求人を見つけて2社ほど紹介してもらいましたが、企業側の反応は思わしくなく、面接すら受けられない状態でした。
厳しい現実を突きつけられて途方に暮れていたそんなときに、偶然、職業訓練の募集を見つけたのです。
わらにもすがる思いで、受講を決めたのでした。
まわりは若い女性ばかり
職業訓練のクラスは20名で全員が女性でした。
その中で、わたしと同年代の人は片手にも満たないくらいで、ほとんどが若い人でした。
しかもわたしの隣の席には、わたしの子供よりも年齢が下だと思われる女の子が座っていました。
そんな状況の中でわたしが思ったのは、50代半ばという年齢で資格を取ったところで何になるのかということと、わたしが一人受講したことで将来のある若い人のチャンスを奪ってしまったのではないかという罪悪感でした。
きっとまわりの人からは、「55歳で早期退職して完全リタイアする人もいるのに、何を今さら職業訓練なんか受けているんだろう」とか「時間がないのだからさっさと仕事をさがしたら」と思われたでしょう。
でも、その時わたしも追い詰められていましたし、せっかくのチャンスなのでがんばって勉強しようと、何とか気持ちを切り替えたのでした。
勉強は楽しくてたいへん
一日中勉強だけをしていればいいなんて何十年ぶりでしょうか。
毎日楽しくて仕方ありませんでした。
ただ、理解力が乏しくて、となりの席の若い子との能力の差を痛感しました。
講師の説明の後に例題を解くのですが、わたしが例題文を読んでいる間に、となりの彼女はすでにペンを走らせて解答しているのです。
とはいえ比べること自体間違っているので、自分のペースでがんばりました。
環境にもすぐに慣れることができて、まわりの若い女の子たちと一緒になって問題を考えたり、分からないところを教えあったりして充実した毎日を過ごしました。
また、個人面談や面接指導もあって、今後について相談することもできました。
雇い止めになったことで今までの自分が否定されたようで、自信を失っていじけていたわたしはずいぶんと勇気づけられたのでした。
訓練に通っている若い子たちも、これまでに悔しい経験をしてきたようです。
確かに仕事が順調だったら、失業していないですよね。
同じような思いをした人たちが集まっていたので、お互いに励まし合いながら学んでいくうちに仲間意識も生まれてきました。
訓練中も就職の面接へ行きます
訓練を受けている期間中も、就職活動は休みなしです。
特に、わたしの受講した訓練コースは3か月という短い期間だったので、勉強だけに集中するというものではなく、並行して就職活動も行っていました。
2か月を過ぎた頃には周りの人たちの就職活動はますます活発となり、採用決定の知らせも聞かれるようになってきました。
わたしも2社ほど面接を受けましたが、残念ながら採用にはいたりませんでした。
受講生仲間に不採用の結果を報告すると、みんなわたし以上に悔しがってくれました。
まわりがそんな風に接してくれたおかげで、くじけずにすんだことを今でも感謝しています。
それに結果がどうであれ、若い人たちに刺激されてわたしも積極的に動くことができたのでした。
訓練が修了したあと
訓練期間の3か月が過ぎたとき、全体の1/3くらいの人の就職先が決まっていました。
この時点で就職が決まっていなかったわたしは、修了後にはまた一人での戦いになるのかと思うと少し寂しい気持ちになりました。
でも実際には、訓練期間が修了した後でもハローワークに行くと受講生仲間に会えましたし、近況を訓練校に報告に行くこともあったのでそれほど孤独感はありませんでした。
おかげさまで職業訓練修了から2か月後には、わたしも運よく就職が決まりました。
わたしが就職するまでについて、もしも興味のある方はこちらをご覧ください。
その後聞いた話では訓練修了後の3か月以内に受講生全員の就職が決まったそうです。
おわりに
わたし自身は年齢的に厳しい就職活動でしたが、職業訓練を受けたおかげで何とか乗り切ることができたのだと思います。
ほんの短い期間でしたがたくさんの人に出会い、講師の方々や受講生のみんな、ハローワークの担当者の方々に助けていただきました。
職業訓練では知識をつけ、資格を取得して就職することが目的ではありますが、わたしにとっては精神的な面で就職活動を支えてもらえたことが一番大きかったと思っています。